「家の奥から“スペイン語とフランス語が入り混じったジャケット”がどっさり出てきてね。これ、捨てるには惜しいんです」
そんなお電話をいただいたのは金曜の夕方。写真を拝見すると、そこには 90 年代 EU プレスの マヌー・チャオ――しかも初回ラベルがちらほら。店長の血が騒がないわけがありません。
翌朝、私は大阪市内の住宅街へハンドルを握りました。車載のナビが示す到着予定時刻は 013:30。道すがらカーオーディオに流したのは『Próxima Estación: Esperanza』。コーラスの〈オエー エーエオー〉が耳に残り、自然とアクセルに力が入ります。
ご依頼主さまは 60 代のコレクター。「若い頃にヨーロッパへバックパッカーで渡り、現地のレコード店で買いあさった」というだけあり、お部屋には旅の匂いが漂っていました。ラベルを一枚めくるたび、スペイン語の帯、ベルギーの販売シール、フランスの輸入ステッカー……。レコード棚は、まるでご本人が歩いてきた地図のよう。
今回お譲りいただいた主な作品は下記の通りです(あくまで一例です)。金額は伏せますが、どれも“次へ繋ぎたい”と思わせる逸品ばかりでした。
どの盤も盤面はしっとりとした輝きを失わず、ジャケット角はピンと張ったまま。コツコツと磨き、立てて保管し、適度な湿度で守られていたことが一目で分かります。盤質チェックの合間、お客様が語ってくださる旅の思い出がなんとも味わい深く、査定というより音楽談義の座談会のような時間になりました。
当店がこだわるのは「買い取る」以上に「届ける」こと。
マヌー・チャオのレコードは、ワールドミュージックやレゲエ DJ がいま最も探しているアイテムのひとつです。とくに 1998 年『Clandestino』EU 初回はプレス数が少なく、状態良好な個体は年々減少。マニアの間では“出会えたら即キープすべき盤”として知られています。
だからこそ、私たちは盤にまつわる“小さなストーリー”まで丁寧に次のオーナーへ伝える準備をします。帯の色が違う理由、カタログ番号の末尾に刻まれた “BAM” の意味、当時のストリート・ムーブメント……。そうした背景があってこそ、レコードはただのプラスチックではなく、“旅を続ける文化”になると信じています。
今回のお宅では、レコードのほかにこうしたアイテムも査定・お引き取りしました。
「一度の査定でここまで見てもらえるなら助かる」と言っていただけたのが何よりのご褒美。専門スタッフが動作確認から梱包まで行うので、ご依頼主さまは指先ひとつ動かさずにすべて完結します。
レコードは“思い出のカタチ”でもあります。処分には勇気が要る。だからこそ当店は三つの姿勢を大切にしています。
今回も、数枚の廉価再発盤がありましたが「どうか捨てずに活かしてください」とのご要望に応え、無料引取→資源循環ルートまたは無料ワゴンにてご自由にお持ち帰りください、にてお客様の手へと。
買取のご依頼は遠慮なくご相談ください。
マヌー・チャオは旅の音楽、越境の音楽。
レコードも同じく、所有者を渡り歩いて響き方を変えていきます。倉庫や押し入れで眠り続けるより、今この瞬間にも “次の耳” が待っているかもしれません。
もしあなたのもとに 「いつか聴くかも」としまい込んだ盤 があれば、私たちに声を掛けてください。査定という名の旅支度を整え、レコードたちを次のステージへ案内いたします。
音楽を愛する人の物語が、またひとつ次へ繋がりますように。